TSショートショート 016 生贄の花嫁にされた男

「…と、いうことでお前はこれから結婚式に臨む。列席者は心配するなウチの配下で固めてある。みすぼらしい式になんぞ絶対にしない」
20160231002.jpg「あらそう」

「…どうした?」

「ん?何だその態度は」

「生憎(あいにく)カゴの小鳥ちゃんの演技はここまでよ。あんたがたの正体も内定調査で良く分かったしね」

「あんだと?」

 ロマンスグレーの壮年男がすごんだ。身長は190センチは越えていそうな偉丈夫である。

 黒づくめの高そうなスーツにサングラスが威圧感がある。

「これまで借金のカタに若い娘をたぶらかし、散々遊んだ挙句に部下に下げ渡して来たでしょ」

「ふっ…なんのことやら」

「あたしがこれから結婚する予定のあんたの部下って、マフィアの若手の鉄砲玉かなんかでしょ?」

「大した想像力だ。芥川賞にでも応募するといい」

「だって何であんたが結婚しないのよ」

「結婚して欲しいのか?」

「あなたと?冗談は加齢臭だけにしてよ」

 空気に緊張が走る。

「だったらどうした」

「やってることはそれだけじゃないよね。違法薬物の売買から総会屋、恐喝、詐欺、…悪いことは全部やってるでしょ」

「さてね」

 サングラスを外して頭をポリポリ掻いている壮年。

「といっても、お前はオレに抱かれ続けてきた」

「悪いんだけどあたし催眠術使いでね。あんたが相手にしてたのは部屋のマクラだよ。あたしはそのそばでライトノベル読んでたから」

「何だと…」

「証拠が掴めない限りは制裁に踏み切らないのがあたし流なんでね。でもこれで確信したわ。あなたの罪状は真っ黒。よって有罪。成敗します」

「こりゃお笑いだ。お嬢ちゃんがオレを成敗するだと?」

 懐からオートマチック拳銃を取り出す壮年。

「どうだ?これでも逆らう気になるか?」

「今日を持ってあなたの組織は壊滅。ボスを失って空中分解よ」

「まだ言うか」

「でも…今日結婚できると思ってたあなたの部下は気の毒だから結婚させてあげる」

「ふむ…大口を叩いてたが要は結婚はしたかったわけか」

「いや、結婚すんのはあたしじゃなくてあんた」

「ふっ!…何を馬鹿な。オレはもう結婚はせん」

「勘違いしてんじゃないよ。部下とあんたが結婚するんだよ」

「バカかお前は?オレは男だぞ?」

 にやりと不敵に笑う少女の口元。

「そうかしら?鏡見てみなよ」

「何を馬鹿な…」

 だが、壮年の男が身体を動かそうとした瞬間、猛烈な違和感が全身を襲った。

「な、何だぁ!?」

 甲高い声だった。

 鏡の中にいたのは、控室で着替えている途中の花嫁だった。

20160231001.jpg

「若い女にしてあげたから。これで部下のブサイク君とも結婚できるでしょ?」

「き、貴様…これは一体…」

 鈴の鳴る様な声だった。

「言ったでしょ?成敗するって。あたしはこの能力を使って世直ししてんのよ。せいぜい旦那に尽くす貞淑なお嫁さんとして残りの人生頑張るんだね!じゃね!」

 翌日、その組織はボスの謎の失踪によって大混乱に陥り、跡目争いの抗争に発展した挙句主要な幹部が軒並み逮捕され、実態を失って事実上解体した。

 構成員たちのその後は余り伝えられていないが、失踪した当日挙行された結婚式によって結ばれた夫婦に関しては、その道から足を洗い、都内某所にて幸せな結婚生活を送っているという。

(END)

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