TSショートショート 005 残業中

 どうしてこんなところにいるのか分からなかった。
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 窓の外には都会の夜景が広がっている。
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 こんなところに来たことも初めてだ。

 そもそももう寝る時間のはずなんだ。

 周囲を見渡してみる。

 雑然としたオフィス。暗い窓の外。薄暗い照明。

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 地面が遠い。

 …背が高くなってる?

 ボロボロになっていたはずの服は、多少着崩してはいたが仕立てのいいスーツになっていた。

 訳がわからない。

 ボクは放課後に呼び出され、校舎裏で手ひどいいじめを受けていたはずなのだ。

 ところが気がつくと、夜のオフィスで大人の男の人になって仕事をしていた。

 周囲を見渡してもひとけがない。

 それでいて、何故か今これから自分が終電まで終わらせなくてはならない仕事のことなどが認識できた。

 …一瞬で大人になってしまった…!?

 パニック…になってもよかった。

 だが、妙に落ち着いていた。

 あのまま学生時代が1年2年と続けば、それはもう生き地獄だったに違いないのだ。それがある意味無事に終わったというだけで問題ないじゃないか。

 …救われた…そう思うことにした。

 そりゃ中学・高校…もしかしたら大学時代を吹っ飛ばしたことに嘆きはある。

 だが、それはごく普通…いや、普通以上の人間の高望みだ。

 自分みたいにいじめられっこ体質の人間など、学生時代は長く続けば続くほど苦痛も長く続くことしか意味しない。

「…!?」

 人の気配がした。

 よく見ると、もう一人人間がいた。
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 いわゆる「OL」さんだ。

 自分は母親以外の女性と接する機会などない。ましてやこんなきちんとした身なりの大人で他人の女性なんて、盆暮れに集まる親戚の中に何人か見かけるくらいだ。

 もちろん、コミュニケーションなど取れない。

「…!?」

 不思議なことに、お姉さん…いや、今は自分も大人になっているのだから同年代かもしかしたらそれ以下なのかもしれないが…も何やら動揺しているみたいだった。

 どうしたことか、周囲を見渡したり、自分の身体を見下ろしたりとおろおろしている。

「…お前…斎藤か?」

 お姉さんは乱暴な口調で言った。

「…佐川くん?」

 こちらも渋く低い声で子供みたいに返す。

 ガタリと立ち上がるOLさん。

 タイト気味のひざ丈スカートから伸びる脚を覆う肌色より若干濃いストッキングの色合いが何ともなまめかしい。

 だが、そんな魅力的な観た目とは裏腹に、中身は…ついさっきまで自分を殺す勢いでいじめていたいじめっ子であるらしかった。

「おいテメエ!こりゃ一体どういうことなんだよ!」

 美女が似合わぬ怒声を上げる。だが、その可愛らしさにかき消されてしまう。

「分からないよ…ボクも気付いたらこうなってて…」

「お、オレ!女になってるじゃねえかよ!」

 ビン!とスカートの生地が張る。

 ガニ股になろうとして出来ないのだ。

 次の瞬間、何故か彼はOLに飛びつこうとしていた。

「いやっ!」
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 小学生の男の子にあるまじき声とリアクションで「大人の男」を突き放すOL。

「…な、何すんだよ!」

 だが、“彼”もまた、現在の自分が置かれた状況を本能的に察知している様だった。顕在意識がそれを認めようとしないだけだ。

「…」

 めげずに彼はOLを壁際に追い込んだ。

「…よ、よせ…な、何を考えてんだ!」

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 だが、OLは何故かそれ以上の抵抗をあきらめているかのように見える。

 彼の目の前に、シャツに覆われた、形がよくそして大きな乳房の形があった。

 これまでに経験したことがない感情と、そして身体の反応が内側から湧き上がってくる。

「お前…お前まさか…」

 その唇を唇がふさいだ。

 じたばたと抵抗するスカートから伸びる脚線美。

 涙が一筋流れ落ち、本人がした記憶のないメイクを洗い流していく。

 夜は始まったばかりだった。

(END)

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